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2008年 11月 06日
大学、大学院の授業の中でいちばんおもしろかったのが藤慶之さんの授業だった。 元京都新聞の記者でその後、美術ジャーナリストとして活躍しておられた。 有名な人だったがえらそうな姿など見せたことがなかった。 私たちには頑固で、照れ屋、気弱で毒があってぶっきらぼうな藤ちゃん(以下、失礼ないつもの この呼び名を許してください)だった。大学院の美術特論Ⅲという授業だった。 実技の先生方を分野別に授業に呼び、それぞれの制作をプレゼンしてもらった後 そこにいる全員でディスカッションするという、受け身を許さない授業だった。 日頃、生徒も先生も自分の専門分野に集中しているが、この時間はそれをとっぱらい、 美術表現行為ということに迫り頭をやわらかくする、それが各自の制作や生き方の一助になれば幸い というのが授業の趣旨だった。 この授業の入りはかなり奇妙で、最初は全員起立、準備運動から始まり、 隣の人にどこが凝っているか聞いて、肩を叩きあったり揉み合ったりする。 そうこうしてる内に人と人の距離が近くなって、みんなどんどん意見を言う様になるという 藤ちゃんの算段に、内気な生徒も皆すこしずつハマっていった。 毎週、ひとりの先生の制作活動が議題とはなるのだが、議論は生活、家族いろんなことに及んだ。 先生が一方的に質問されるだけではなく、先生から生徒への質問もバンバンあったし、 藤ちゃんがいつも先頭きって切り込むのは先生の恋愛についてだった。 どういう恋愛をしてきたか、それは制作にどんな風につながっているか、口説き方はどうか。 そして自分自身の恋愛もさらけだした。 はっきり言って私は藤ちゃんが授業でしゃべってたことと言えば、 恋愛の話や失敗談以外あまり覚えていない。 授業の終わりには必ずレポートも書かされた。 いちばん最後のレポートは「藤に物申す!!」という課題で書け、しかも自宅に郵送するようにと 全員藤ちゃんの住所を教えられた。 私は、その頃には藤ちゃんに惚れきっていて、ラブレターのようなレポートを書いたことが懐かしい。 旦那との結婚が決まった時はすぐに報告した。 とても喜んでくれて、しばらくしてから一度私たちを飲みにつれていってくれた。 同じモノづくり同士の結びつき。八木一夫夫妻にしても小林正和尚美夫妻にしても 大変やけどすばらしい前例があるよ。 お互い思いやったりケンカしたりしながら共同生活できる幸せを大事に、 と言われた。 ギャラリーRAKUで展覧会をした時は、見にきてくれたのに私は運悪くその場にいなかった。 後で電話したら、 よかったよ。あなたはそのままいきなさい。 と言われた。その時は、ただ嬉しく思ったんだけど、今はその言葉が忘れられなくなった。 実はニュートロンの個展に来てくれるかなと楽しみにしていた。 でも代わりに届いたのは奥さまからの喪中ハガキだった。 ギャラリーで自分の作品の前に立っていたら藤ちゃんのくしゃっとした笑顔やら鋭い眼の光やらが 浮かんだり消えたりした。 今頃はむこうで鈴木治さんや八木一夫さんや愛したたくさんの作家に囲まれて 千鳥足で大好きだった俳句を詠んでいるんですか?
by ai-pittura
| 2008-11-06 00:10
| 人間
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