
お盆は田舎に帰ってたゆいがおばけ野菜を土産に戻ってきた。
まわりの何人かは毎年田舎に帰る。
私の先祖は父方も母方も北陸の人だが祖父母の世代から大阪に住んでいるので、私には田舎がない。
小さい頃から生きものとか自然が好きで、週末はよく家族でそういうところに出かけたが
それが生活と隣りあっていないことが淋しくて、田舎のある人に羨望の気持ちがあった。
そういう私が田舎に住む機会が2年前突然やってきた。しかもイタリアだった。

青天の霹靂。風景が人生を変えるというのはほんとにあると思う。
自転車でこの風景を20分走って駅に行く。時々野ウサギや雉子が飛び出す。
帰りは、毎日寄り道。
見上げるほど高いトウモロコシ畑のトンネルに入って、むせかえるような青い匂いにひとり寝転がる。
雲の影に入って雲と同じ速さで歩いて、誰もいない廃墟を隅々まで探検。
180度の果てしない空とキーファーの絵のような耕地と、木々と畑とそこに点在する小さな家々。
そこでは人なんて石ころほどの小さい存在。大きな風景の中のたったひとしずくに過ぎない。
その心地よさにのみ込まれ、日本を忘れそうになったこともあった。




イタリアでの経験があって、日本のよさも実感するようになったし、
今はもっと日本を旅してみたいと思うけどやっぱり忘れられないものはある。
風景を乳白色から薄墨へのやわらかな階調に沈めた霧のやわらかい冷たさ。
それから日本で見るよりもっと大きくて、ある時は赤くある時は黄色く網膜を染めた太陽。
あれは私の田舎の風景になった。