
ライブの次の日は少し鎌倉を歩いた。ふらっとくるような暑さだった。
三連休の最終日だったからか駅周辺は観光客や海水浴客でごったがえしでいたが
しばらく歩くと、観光ルートからそれたのか次第に人はまばらになった。
釈迦堂口切通し、この目で見たかった。
以前、田中輝男さんという画家の描いた絵にこの切通しがあった。
純粋さゆえに夭折した、あまりにも誠実な彼の絵が心の隅にひっかかっていた。

実際に見た切通しは彼の絵の印象とはまた違い、
凄い勢いで迫ってきた。
それでいて静かだった。
風の吹き方がそこだけ違っていた。
天上からは所々にまるく木漏れ日がさしていた。
中のトンネルは微妙にカーブしていて
入り口から出口の風景は見えない。
異様なほど涼しい風が洞から吹いてきて、
それはまるで異界への入り口のようだった。
ふと見るとどこからか猫がやってきた。
ここに住んでいるんだろう。
エメラルドグリーンのぎらっとした目をしていた。