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ふりつもる線

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2007年 06月 13日

cammino

cammino_b0080173_11545543.jpg
先日、サン・ジャックへの道という映画を見た。
ヨーロッパにはエルサレム、ローマと並ぶ三代聖地のひとつである
サンティアゴ(フランス語でサン・ジャック)に続く巡礼路がある。
フランスを出発点とし、スペイン、サンティアゴまで続く1500kmの巡礼路で、
世界中の人が、宗教的な理由を超えて歩いている。
完歩するには2ヶ月かかり、その間、人々は仕事も生活も遠くにあずけて
ただ目の前に続く一本の道を歩くために歩く。
そう言えば、イタリア語のcamminoという単語の中には
「歩み」と「道」という二つの意味がある。多分スペイン語やフランス語も。

少し前まで私はサンティアゴ巡礼路は熊野古道と姉妹路ということぐらいしか知らず、
漠然と敬虔なキリスト教信者が歩くものと感じていて、地理的な意味でも遠い存在だった。
急に、この道が身近になったのはイタリアの友人Tが去年の夏に
2週間だが巡礼路の一部を歩いたことからだ。
彼は宗教上の特別な理由で、友人や神父さんと共に巡礼したのだが、
その後見せてくれた数々の写真が脳裏から離れなかった。
そして、この映画が公開され、私は流れる映像の中でこの道を見ることになった。
若干、直接的ではあるが最近見たものの中では一番いい映画で、
見終わった後はあったかい余韻に包まれた。
残念ながら関西の上映は全て終了。
こういう映画は短期間で終わってしまい、いつも大きな映画館ではとりあげられることはない。
関東方面は神奈川が22日まで東京は下高井戸で7月に公開される。

cammino_b0080173_12393523.jpg映画を見た数日後に、サンティアゴへの道を完歩したイタリア人Fが
今ちょうど京都にいると知り、話を聞く機会を得ることができた。
彼はこの道を歩き終え、ただ人生だけがそこにあった、と言っていた。
Fの見せてくれた数々の写真よりも、ことばよりも
Fが得たものの大きさを感じた一時だった。

映画を見て、新たな友人と食事を共にし、サバの詩のある一節が浮かんだ。
「生きることほど、人生の疲れを癒してくれるものは、ない」

1500kmの道を歩くということ、それは健康で、足さえあれば誰でもできること、
そんな一番簡単なものの中に、
一番難しくて、大事なものが隠されているような気がしてならない。
一本の線を引くこと、引き続けること。
いつかサンティアゴへの道を歩いてみたいと思っている。
でも、道はサンティアゴに行かなければ歩けないということではないはずであり、
家の扉を開けた時から旅は始まるし、
すべてのことにおいて、そのブロックを一度崩し、
また積んでいくという作業をずっと続けていきたい。


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by ai-pittura | 2007-06-13 11:52 | 風景


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