はじめてここに入った時の感触はおそらく忘れない。
音を立てないように、息も殺して
一歩、足を踏み入れることに勇気をかき集めた。
見てはいけないもの、知ってはいけないもの
近づいてはいけない領域に
入ろうとしているかのように戸惑った。
自分が今まで知っていたものはけしつぶのように小さくなって
目の前には果てしなく大きな時代のかけらが孤独の風に吹かれて立っていた。
ほとんど誰の目にも触れることなく
永い間、人が立ち入ることも無く、
この小さな田舎に
大海を漂う難破船みたいに
ただ在る。在りつづけてきた。
今、この瞬間も。
そのことに私は限りない勇気をもらった。
そして、私のほんの少しの時間を重ねさせてくれたことに
感謝した。

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