イメージを自分のもとにたぐりよせ、
消えて思い出せなくなる前に意識に沈下させる。
時として、それを助けてくれるのがことばである。
Umberto Saba。
トリエステで生まれたイタリア人の詩人だ。
須賀敦子さんの本で私はサバと出会った。
サバと会って話しているかのように私はサバに触れた。
私はまだイタリア語で読むことはできないが、須賀さんの訳は秀逸だと思う。
トリエステには、閉ざされた悲しみの長い日々に
自分を映してみる道がある、
このくだりで始まる「三本の道」といううた。
サバにこだわりつづけた須賀さん。
サバは私の中にもいつの間にか棲みつき、
深く根を下ろしはじめている。
ことばにならなかった渦をサバの中に発見し、
安堵と、言いようのない郷愁を感じ、狼狽する。
私もいつかサバを、須賀さんを追いかけてトリエステへ行くだろうか。