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ふりつもる線

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2015年 11月 20日

オークの樹

来年引っ越しをすることになった。
まだ先なので少し早いけれど、
義母から、食事のための机をプレゼントしてくださるとのお言葉。
いえいえ、お気持ちだけ、と押し問答になってしまうけれど、
じゅんとよく話し合って、いただくことを決める。

お義母さんの好きなイギリスの古い家具が並ぶお店へ行く前夜、夢を見た。

机を選ぶ時は樹の質(たち)をよく見ること。
少々頑固で偏屈でもいい、実直な樹であること。
頭のなかでしわがれたお爺さんの声がする。
眼の前におおきな樹があらわれる。
大地に張るがっしりとした根、ごつごつした太い幹には幾つかの瘤、
樫にも似ているし欅のようにも見える。
枝分かれしている梢の先の葉はそんなに多くないけれど
風に揺れてきらきら光っている。
樹は白黒でゴッホの素描のタッチだった。

眼が覚めてゴッホの素描集をめくったけれど、実際にそんな絵はなかった。
けれど、この素描は夢に出てきた樹によく似た風情。

オークの樹_b0080173_17332342.jpg

お店でぐぐっと惹き付けられたのは、深い焦茶色に鉋跡がうつくしいオークの天板。
引き出すと左右に長くなる伸張式のドローリーフテーブルで
90年ほど前、農民や使用人の方が使っていたのではないだろうかというもの。
じっと見ていると煙草をくゆらせながらポーカーをする男たちや
炭焼きの堅いパンをスープにつけて子どもに食べさせる女のすがた、
質素だけれど愛情に満ちた豊かな風景が立ち上がる。
私たちはここで何を食べよう。
机を見た瞬間に思い浮かんだのは葡萄酒。
薄いグラスに入ったワインではなくて、少しゆがんだガラスのコップに入った葡萄酒。
セピアの天板に添えられた濃密なルビー色はどんなにうつくしいことだろう。
低火度で焼かれた白いピッチャーに入れたミルクもきっと似合うし、
漆碗のお味噌汁や秋刀魚、出し巻きもいいと思う。

机になったオークの樹、
この樹はどこで枝葉を広げ、どんな風景を見ていただろう。
帰り道、車に揺られながら、樹の生きていた風景をいつまでも想像していた。



by ai-pittura | 2015-11-20 18:17 | 風景


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