
雨の日がつづくと、ふと身体に蘇る感覚。
5月のある日、釣りの師匠Kさんと雨の中釣りに出た。
小降りだった雨粒は少しずつ大きくなり、やがて勢いを増す。
雨がリズミカルにレインウェアを打つ音と振動を感じながら竿を降り続ける。
それはまるでひとつの楽器になったような感覚。
風景に溶け合った1羽の鳥のようなKさんの姿が遠くに見える。
腰まであるゴム長でゆっくり河口を進む。
ゴムの布地を通して、水のかたまりが太腿に寄せてはかえす。
次第に強くなる雨はやがて髪の毛から首をつたい、背中に流れ落ちる。
雨がゆっくりと内部に浸透し、私自身は外側へと流れ出す。
雨と私の境がすこしずつ朧になり、溶けてゆく。
雨になってゆく。
身体にのこった雨の感覚は、家に帰ってからも消えることはなく
夢のなかでも雨中竿をふり続け、
わたしはたくさんの鯰を釣った。