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ふりつもる線

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2014年 01月 14日

しるべ

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オオワシの猟場である琵琶湖北岸。

わこちゃんから湖北へ越冬のため渡ってきているオオワシがいると聞いて、とても逢いたいと思った。
オオワシは北方のイメージが強く、まさか滋賀県に野生のオオワシが来ているとは想像もしなかった。
調べてみるとオホーツク海からカムチャッカ半島周辺に繁殖するオオワシは
冬の間、北海道や本州北部に飛来しており、琵琶湖の北部は確認されている限り最南限の越冬地だそうだ。
そしてこのオオワシは山本山という、なんとも海苔を連想してしまう名の小さな山に来ていて、
数百m先の野鳥センターからは真正面にその生態を観測できることもわかった。
ただ、湖北は雪が多い。
降っているとオオワシの姿を確認できるかどうか、
予報を確認して雪の谷間を縫うように晴れたある日、ふたりでドキドキしながら北へと車を走らせた。
かなり田舎といっていい山本山の麓あたりに近づくと、三脚にスコープを据えた人がずいぶんいて驚いた。
野鳥センターも満車に近い。
中に入ると山本山を望む部屋にはいくつもスコープが設置され、
流れているオオワシのライブ映像をたくさんの人が見ていた。
スコープをのぞくと樹にとまってじっとしているオオワシがいる。
黄色い嘴、黒と白の大きな翼、猛禽類特有の眼。
とまっている樹を何度も確認しながら、点のようなオオワシを肉眼で追う。
まだ遠い。
前日は狩りをしなかったようで、もうすぐ飛ぶ可能性もあるとのこと、
とにかくもっと近づいて見たいと逸る気持ちで山本山まで歩く。
麓でスコープの人たちに混じってオオワシをしっかり肉眼で確認すると、
その大きさと存在の不思議さがひたひたと押し寄せてきた。
渡りの不思議さ、
推定年齢18歳以上のこのオオワシは16年連続でここに来ているという。

なぜ、湖北まで来たのだろう。
北海道も東北も通過して、疲れ果てた翼を休めることなく何故毎年ここまで旅をつづけるのだろう。
水鳥や魚など食糧が豊富な琵琶湖を気に入ってくれているにしても、
なぜ隣の山ではなく、いつも山本山なのだろう。
鳥のもつ標とは一体 何なのだろう。

と、その時オオワシが空中に飛び立った。
それは空間を裂くような瞬間だった。
大きな翼が風をとらえる。
カメラをかまえていたけれど、瞬きをすることもシャッターを押すこともできず
ようやくシャッターを切ったのはオオワシが一段高く舞い上がってからだった。
翼を広げると2.4mにもなるというその大きさは地上からでもしっかりと感じ取ることができた。

なんという姿だろう。
勇壮で堂々としていて、とても孤独だった。
その孤独は決してかなしいとかさみしいとか そういう類のものでなく
ただただ自分の命をひとりきりで引き受けているという、強い覚悟にも似ていて。

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出逢いはいつも奇跡のようだと思う。
様々な偶然や必然が重なり合い、何かがもたらされる。
帰り道もその次の日も、そのまた次の日も、
オオワシと出逢えた余韻がふかく ふかく響いていた。

制作の日々は個として内をおりてゆくこと。
その先には個を超えた果てしない広がりがあることを信じてやまない。
しかし、その道が一筋縄ではいかぬことも確か。
制作の傍ら、野山に出かけることは自分のなかで大事なバランスになってきていることを再確認する。
野山で意識する動植物、それはここで確かに生きている人間以外の生き物たちを知ることで
個ではなく種としての命や全体としての生態系を意識する時間なのかもしれない。

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by ai-pittura | 2014-01-14 23:22 | 山へ


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