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ふりつもる線

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2013年 05月 19日

水辺にて

水辺にて_b0080173_2153311.jpg
友人が湖の北、深く切れ込んだ入江に連れていってくれた。
隠れ里のようなTという集落の果てがこの入江だ。
琵琶湖には様々な顔がある。
湖岸道路はもう何度も走っていて、いろんな表情を見てきたけれど、
それでもまだこんな場所があったことに息をのむ。
釣り人の密かな穴場になっているらしく、木陰に釣り糸をたらしている人がいる。
時々、竿をふる音と魚のちいさく跳ねる音。
湖面には波がない。

水辺に近づくと、スチロールの破片や積もったゴミが目についた。
角がまるくなっていたり、細かく砕かれたものが多い。
釣り人が残していった新しいものもあるけれど、
この入江に流れ着き、堆積したのだろう。
それは風景のなかで、異質に見え、
生きていくなかで溜まっていく澱のようなものにも感じ、胸の奥が重くなる。
それでも
視線を上げれば、別世界のように透明な緑の世界がやわらかな明るさの中にあった。

入江に突き出た小さな岬のような部分に歩を進め、奥に入ると
水辺の近くで鹿の頭骨に出逢った。

頭骨は笑っているように見えた。
鹿は最期の場所にこの水辺を選び、喉を潤して草上に横たわっただろうか。
その風景が網膜に映像となって浮かんだ。
いずれ骨は植物に覆われ、少しずつ分解されながら土に還っていくだろう。
その風景のなかには、ひとつの命の豊穣な死と生の時間があった。

一週間前の出来事だ。
とても不思議な場所だった。
”水辺”というもののもつ象徴的な場所であるようにも感じた。
透明なしずもり。
生と死は 分かち難く
境界上を揺らめいていた。

by ai-pittura | 2013-05-19 23:01 | 風景


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