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ふりつもる線

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2013年 04月 16日

Richard Davies

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リチャード・デイヴィスという版画家を知ったのは、数年前の歩歩琳堂の絵画祭りだった。
壁一面に並べられた作品のなかで、彼の版画に吸い寄せられた。
少し目を離すと、また見たくなった。
Autoportrait、彼の晩年の自画像だった。
それからしばらく時間が空き、今回ある方のお宅で彼の版画二点に出逢った。
私は再び、数年前のその時以上に不思議な感覚にとらわれた。
うまくいえないけれど、彼の作品を見ていると、
人生を、生きていて死んでいくということを、とても遠いところから俯瞰しているような感覚になる。
そして、海のようにやわらかくて大きなもののなかで揺れ、眠りに落ちるときのような安堵感に包まれる。
哀しみを包んだ幸福といえばいいのだろうか、
それはとてもやさしく、懐かしい。
こんなにも光に包まれた深い黒を感じたのは、彼の版画がはじめてだと思う。

いつか、彼の作品を手に入れることができればと思う。
毎日、彼の版画を傍らに暮らしてみたい。

リチャード・デイヴィスを見ると、改めて銅版画がしたいと思う。
私にとって銅版画の一番の魅力は白がひと削りで黒になるところだ。反対も同様。
つまり、版に傷をつけた部分が黒くなるが、そこをもう一度フラットにすれば白になるという点。
黒は同時に白であり、闇は同時に光であって、同じものの両面であることが
こんなにも端的に表現され得る素材であるということ。
版画はとてもシンプルで多くの可能性を秘めていると思う。

今回、個展中、「もう版画はしないのですか?」という質問をたくさんいただいきました。
お会いした方にはその都度お話していたのですが、
実は滞在制作をさせていただいていた銅版画工房が、その後ご事情で工房を休止されており、
今は銅版画の制作はできていない状況です。
銅版画が制作できるチャンスがあれば、また再開したいと思っています。
気長にお待ちいただけましたら嬉しいです。


by ai-pittura | 2013-04-16 23:25 | 版画


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