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ふりつもる線

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2012年 12月 03日

1953-4年のチェット・ベイカー

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思いがけず利香さんからレコードをいただいた。
それもジャズをたくさん。
そのなかには私が大好きな人や、ずっとアナログで欲しかったものもあって
一枚一枚、針を落とす瞬間の静かな高鳴りが、このところ毎日続いている。
なぜか夏はあまりレコードを聴かない。
ゆっくりと黒い円盤が回るのを見つめたくなるとき、
デジタルでは消えてしまった音に耳を澄まし、胸にすとんと落ちてくるようなまっすぐな音が恋しくなる時、
それは秋から冬にかけてなのかもしれない。

1年前、展覧会で阿蘇に滞在していた時、このホーンスピーカーと出会った。
モノラルスピーカーは骨董市などで見かけることがあってもずいぶん高く、
とても手が出るものではなかった。
それを阿蘇で、ずいぶん安くお譲りいただけることとなり、それでも私には大変高い買い物で、
画廊の中尾さんが絵の売れたお金を立て替えてくださり、買うことができたのだった。
スピーカー(アメリカ製でちょっとハッキリしないけれど多分1920-50頃の物のよう)は
新しいジャックに換えてくださっているので、i podにだって繋げる。
ただ、たくさんの楽器が入っている音楽、バンドやオーケストラとなると拾えない音があるので、
適さないのだけれど、
独奏〜クインテットくらいのジャズやクラシックは秀逸で、ドキッとするほどに硬質で実直な音なのだ。

1950年代のチェット・ベイカーを、同じ時代のホーンスピーカーで聴く。
しずかな秋の終わりの光のなかでコーヒーを飲む。
触れられそうなほどの実感が部屋のなかに満ちていく。
なんて贅沢なんだろう。
(なんだか長田弘さんの詩みたいだ!長田さんもこんな時間を過ごしているのですか?)

利香さん、本当にありがとうございます。

ところが、最近スピーカーの調子が悪くなり、
阿蘇にお電話すると、中の線が弱くなっているかもしれないとのことで
近々修理していただくことになった。
今の時代のものは、今の時代のものですばらしい。
でも電化製品などの修理代が異常に高いことが多く、新しいものを買う方が安かったりすることは腑に落ちない。
修理しながら長く使えるものと共に暮らせることは、しあわせなことだなあと思う。


by ai-pittura | 2012-12-03 15:38 | 仰木の暮らし


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