
朝、ヨシダさんのおうちを出て森に向かった。
ぽつぽつと並ぶ家や畑の間を抜け、しばらく歩くと森の入り口がぽっかりと空いていた。
小雨が降りはじめていたけれど、雨粒は樹々の下にはほとんど落ちてこず、
一歩足を踏み入れるとそこは別次元のようだった。
自然はいつもこわい。
こわいという言葉が合っているのかわからないが、
特にひとりの森で、山で、海で感じる、独特の緊張感は、
さらされている命に対する本能的なもので、
同時に突きあげる、あのワクワクした感じは
ふるい動物たちの血が自分にも流れている証なのかもしれない。
それを意識化したりことばにしたりすると離れてしまうし、つまらないし、
訳もなく流れてくる涙はそれだけではないだろう。
いつまでもわからないけれど、
私の、確かな、信じられるものだ。