家から車ですこし行ったところに、大きな絵が描けるスペースを借りている。
天井高があって、窓からは田畑と山と空が見える気持ちのいいところだ。
たくさんある窓にはどれも網戸がないので、いろんな虫が飛び込んでくる。
そして、そのまま脱出しそこねて力尽きてしまったのか、
時折彼らの死に出会う。
手にとって近くでその姿を見ると、宝物のように美しい。
制作の合間、ふと気付くとずっと眺めている。

キイロスズメバチは最期をみとった。
か弱く、それでも床を懸命に歩こうとした。
小さく足をこすりあわせて、ある瞬間動かなくなった。
ふと空間が小さく陰った。

ヒメキマダラヒカゲは、その名前を探しあてるのにずいぶん時間がかかった。
舌を噛みそうな名前だ。山地などでよく見られるらしい。
内羽と外羽の模様が全然違う、とてもきれいな蝶だ。
クマバチは最近山でも我が家の近くでも多くて、少し怖がっていたけれど
花粉だらけでアザミにもぐり込んでいるところなんか、夢中でとてもかわいい。
はじめてふわふわの毛に触れてみた。
オオゴマダラエダシャク、マダムのコートのようにオシャレだ。
飛ぶ形はそれぞれ見事に違い、過去をたどれば、おぼつかなき足どりの幼虫が蛹を経て
このような姿になったことを思うとそれは本当に奇跡だと思う。
うちの庭でもモンシロチョウやアゲハ、オイガの幼虫が葉の上を闊歩しているが、
今年なんとか蛹を見つけ、羽化の瞬間に立ち合えたらと思う。
幼い夏の日、虫かごの中で何匹ものアゲハを羽化させた、あの心躍る時間が懐かしい。