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ふりつもる線

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2012年 03月 16日

お山

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心は山に向かっている。
日中の穏やかな陽射しに春のひとあしひとあしを確かめる度に、
若葉の山に入る愉しさを思い、どことなく浮き足立っている。
思えば、滋賀に住むようになってから、絵を描いていない時間の過ごし方がずいぶん変わった。
京都での日常の筆休めと言えば、専らお酒で、
すぐ近くに住むのんべえからもよくお誘いがあり、飲まない週はなく、
鴨川沿いのカフェや馴染みの喫茶店には制作の休憩にゆっくりできる大好きな席があった。
古本市に骨董市、手づくり市、今思えば京都にはしょっちゅう面白い市があったし、
家から歩いて数分のところに、学生時代から何度となく通ったおいしいお店が何軒もあった。
今思えばある種、奇跡的なほどだ。
みな川の蕎麦、ジュネスの肉汁滴るハンバーグ、何を食べても丁寧に作られていて優しいMIWAのごはん、
グリルにんじんのクリームコロッケ・・・数えればきりがない。
残念ながら今近所にそういったお店はなく、お酒や外食の幸せはすこし遠いものとなった。

仰木に住むようになって、制作の合間には庭の草花を観察するのが楽しみとなった。
夏は草刈りが手に負えなくなるけれど、
冬の長い禁欲期間を経た後の芽吹きの嬉しさといったらこの上ない。
そうして、最近はなんだか用もないのに庭を見に出たり入ったりする回数が増え、そわそわとしていて。

もうひとつは車生活になったことで、身体が本当に鈍ってしまっている。
腰痛、肩凝りもひどく、ここまで歩く機会が無くなったことで、
今まで等閑にしてきた身体に対してようやく少しずつ意識をもてるようになってきた。
湖岸道路を走れば、右手には湖、左手には比良山系の山が湖北まで長く連なっている。
滋賀の自然は懐が広い。
夏は湖で泳ぐとして、この山々に登らない手はない。
比良山系は滝あり、湿原あり、1000m前後の山が多く、コースも多彩だ。
そんな訳で今年は何度か山に登りたいと思う。少しずつ山の道具を揃えていきたい。
おにぎりを食べるためやコーヒーを飲むためだけに山に入るのもいい。

震災から一年が経った11日、北比良峠方面に少し入ってみた。
まだ雪がずいぶんあって、山は茶色い印象だったがヤシャの若葉が芽吹いていた。
川のそばで、猫のためにほわほわのネコヤナギを一枝いただいた。
自然のやわらかく細かい襞にふれるなかでは、バランスを欠いている部分や凝り固まっている部分が
浮き彫りになるようだ。それは精神的にも肉体的にも。
お山は問いだけをのこして、あとはあなた次第よとやさしく微笑む。
短い時間ではあったけれど山の澄んだ空気と沢のせせらぎ、しんとした樹々の気配に触れて、
内側のなにかかたいものが、ほろほろと解かれていくようだった。
私はまだ山のほんの表層しかしらない。

お山_b0080173_20241086.jpg


by ai-pittura | 2012-03-16 22:22 | 仰木の暮らし


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