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ふりつもる線

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2009年 01月 27日

春の山

今月から週に一回、春子おばあちゃんという人の家に行っている。
春子おばあちゃんは95歳、お家のベッドで寝る時間がほとんどという生活をしている。
少し前までは書道をしたり俳句をつくったり、読書や絵を見に出かけるのも好きだった。
いまはそんなことも難しく、ずっと家で変化のない日々を過ごすようになり
どんどん元気もなくなるおばあちゃんを心配して、家族の方が私に一本の電話をくれた。
それは、おばあちゃんの絵の家庭教師をしてもらえないですかという内容のもので
在宅介護のなかに絵があればいいなあと思っていた私は二つ返事でOKさせてもらった。
と言っても家庭教師なんていう大それたものではない。
春子おばあちゃんが以前たくさんの俳句をつくっていたことを知り、
その俳句につける絵を描こうということになった。
俳句には花や草木がたくさん出てくる。
そして図鑑の写真を見たりしながら一緒に絵を描く。
春子おばあちゃんが頭に思い浮かべている風景を紙の上に具現化していけるよう
ゆっくり話しながら少しずつ引き出していく。
伊吹山のふもとに電車が走っていて
北濃駅っていう駅があるんよ。
そこが終着駅でね、まっすぐに道がのびてて
その行き止まりのところに桐の木があって
お花が咲いてるの。
薄紫色で、ちいさな百合みたいなかたちかなあ、
上のほうにだけ咲いてて。
やっぱり桐の花がいちばん好きですねえ。
でも全然描けないわ。何もかもわからなくなるの。
ああ、そうススキも生えててね、
伊吹山っていう山が遠くにあって。

断片をつむぎあわせるように、ひとつひとつ少しずつ描いていく。
そして、すうーと直線の上に盛り上がった伊吹山の曲線が、まるでそのまま写したかのように
比叡山の稜線に似ているのを見た時、突如胸が熱くなった。
ふと春子おばあちゃんの窓を見やると、その日も比叡山が美しかった。

by ai-pittura | 2009-01-27 20:19 | 春子おばあちゃん


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