PHOTO by
Rika Okubo
9.
femme(for every mothers) 約3分
目で読む詩と耳で聞く詩というのはずいぶん違う。
特に耳にのこる、前のことばのニュアンスを描きながら、
次のことばを聞く中では
文脈が解体され、ところどころの名詞が宙に浮かび
リーディングの声の強弱や速さの変化をリズムとして感じる、
という状態だった。
音楽だけとはまた全然違うことばの作用に驚いた。
では、観客の方にとってはどうだったのだろう。
ほぼ1〜3分という凝縮された時間の中で
私の動きを見ながら、
絶え間なく紡がれることばをどんな風に
とらえたのだろう。
様々な感想をきいてみたい。
9番目の詩femme(for every mothers)は高橋氏が
お母様に向けてつくったものだ。
少し考えて私は先日描いた絵を持ち込むことにした。
私はまだ母になるということを知らない。しかし
いつかそれを予期もする。
未知も既知もある不可思議な存在、それが私にとっての女性。
詩のはじまる直前にそれまで紙で覆っていた絵を外し、椅子の上に置き
それを見てもらいながら詩を聞いた。
静かな中にことばが林立する。
それまでとはまた違ったことばと絵の関係だったかもしれない。
会場には宮城県から高橋氏のお母様も来られていた。
すくっと細い一本の木のように、思わず目を見張るほどうつくしく
歳を重ねられた女性だった。
凛とした、それでいてやわらかい佇まいが瞼に残っている。