久高島であるおじぃと出会った。
おじぃの仕事は農業、沖縄の民謡を愛していて、
ポケットに古びたカセットテープを持ち歩いていた。
おじぃはとびきり唄が上手でもなく、さんしんも弾けないのだが
民謡がとても好きだから、
長い時間をかけてさんしんを手づくりしていた。
そのさんしんはほぼ完成間近だったが、出来がどんなものか、
音の調子はどうか自分ではわからないからと、
酋長に試し弾きを頼みにきていた。
音は、、上等だった。
安心したおじぃはラジカセにテープをセットして
民謡にあわせて、小さな声でところどころ唄い、
まったくはずれた音だったが、でたらめに一生懸命さんしんを
ぽろんぽろんと弾いていた。
そんなおじぃを私は横でスケッチしていた。
その夜、一緒に飲まないかとおじぃに誘われた。
海を見下ろす小高い丘のようなところで、民謡を聴きながらおじぃは私を待っていてくれた。
やっぱりラジカセと一緒だった。
それから、泡盛まさひろを買って浜におりた。
目の前は沖縄本島の薄明かり、後ろは漆黒の闇に満天の星だった。
おじぃの話をたくさん聞いた。育てている月桃やドラゴンフルーツのこと、
離島フェアでは島らっきょうがよく売れたこと、家族のこと、
本島でのしんどかった出稼ぎ工事のこと、沖縄から一度も出たことがないこと、
雪を見たことがないこと、久高の生活をとても好きだということ。
おじぃを描いたスケッチを近々送ろうと思っている。