ずり這いから少しずつ四つん這いのハイハイへ移行中の六熊。
本棚の本を一冊ずつ全部出す。
箪笥の引き出しから洋服を一枚ずつ、
ティッシュを箱から一枚ずつひっぱり出す。
すこし、またすこし 細かく動くようになってきた六熊の指先から世界が広がりはじめる。
秋の展覧会にむけて制作時間をなんとかつくらなければ。
アトリエにもうひとつ大きな棚を作りたいなあ。
中断している家の整理もそろそろしないと。
そう思っていると、時間は集めても集めても足りなくて
何も進まないまま 焦って
気づけば ぎゅうっとかたくなった心。
深呼吸して六熊を見る。
ぷくぷくのお餅のようなほっぺ。
ふわふわの髪。
長い睫毛。
すべすべのお腹に
むっちりした太もも。
両手を広げて、こちらに向かって差し出される二本のやわらかい腕。
その手をとることより
だいじなことってあるだろうか。
絵はたくさんは描けないけれど
一点でもきらり光るものを描こう。
少しの制作時間でも濃くて密度の高いものにしよう。
家がしばらく落ち着かなくったって
整理が数年遅れたって たいして困らないじゃないか。
命まるごと 裸で抱きしめられる尊い時間。
六熊とおなじ地表から並んで世界を見てみると
今日という日は果てしなく永く、
かぎりない愛おしさが胸に満ちていく。
一緒に雨の音につつまれる。
おかゆベトベト祭りに参加する。
汗をたっぷりかいて、昼間から何度もシャワーを浴びて、
夏がきらきらとはじまった。