産後しばらくして乳口炎になり、2か月ほどの間すこし回復してはまた乳腺がつまり、の繰り返しだったけれど
先月から授乳の幸福な時間がもどっている。
痛みが激しい時、愛おしい授乳の時間は半分苦悶の時間となったけれど
それでも安堵の時間であることに変わりはなかった。
授乳の時間は、太古からなにも変わらないであろう生き物の営みに思いを馳せる時でもあり
ことばを介さない、深くあたたかなつながりが
わたしたちの命の底辺にあることに今も胸打たれる。
窓をたたく雨音の傘のもと、身を寄せあうように授乳していた大雨の夜のこと、
無心になって乳を吸う赤ん坊にからだを預けていると
ゆっくりと流れてゆく乳の葉脈が瞼に浮かぶようだった。
赤ん坊がお腹にいたときのように、わたしと六熊の境界はゆるやかに消失して溶けあい、
六熊の宇宙にすっぽりとおさまるような感覚になったことを
きっとこれからも忘れないと思う。