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ふりつもる線

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2013年 05月 21日

宮崎学さん

宮崎学さん_b0080173_15445744.jpg

野生動物の生き死にについていろいろ調べていたなかで、
この写真に出会った。(写真は宮崎さんのサイトからお借りしました。)
その時の感覚が、あの入江で感じたものと、あまりに似ていた。

この写真は宮崎学さんという写真家による、
「死」という写真集(一匹の動物の死の後を定点観測している)に収録されているなかの一枚だった。
取り寄せた写真集は、本当にすばらしいものだった。
そこには死が新たな生命となりかわっていく様子がつぶさに記録されており、
種のなかに刻まれているそれぞれの役目と
懐深い、自然の奇跡のようなバランスに、胸がふるえた。

私は、数年前じいじいが亡くなった後に連作を描いていたときのことを
もう一度思い出していた。

以下、宮崎さんの文章です。


死を見つめて


自然界には誕生の数だけ、死もある。毎年生命の誕生が爆発的に繰り返されて、膨大な死も続く。
そして結果的に、死はあらゆる生物の生命を支えている。
そんな自然界の生死にカメラを向けてみると、死を待っている生物がたくさんいることに気づいた。
いわば、他の動物が死んでくれないと生きていけない生物 がいたのである。
これはまさに、「死」を前提として自然界は成り立っているのである。
こうしてみると、死は必要なことに気づく。あらゆる生物が輪廻転生を繰り返すために、
死はなくてはならない。自然界の営みそのものは、こうして存在し続ける。
この当たり前にして大切なことを、今日の私たちは忘れてしまった。
誕生の瞬間ばかりを美しく捉える「花鳥風月」で自然を見るのではなく、
死後の世界も知っていいのではないか。他の生物に食われて自然に形がなくなってい く。
それこそが、自然の生命としてもっとも幸せなことかも知れない。
そして、多くの生き物が、死んだあと妊娠期間とほぼ同じ時間で土に還っていくことがわ かった。
生命体の大家さんである地球から『選ばれた生命』として、
住んでもいいことを許してくれた時間を大切にしながら、僕も生きてみたい。
写真を撮ってみて、僕はつくづくそう感じた。


宮崎 学



by ai-pittura | 2013-05-21 16:02 |


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