2009年 10月 06日

化石の犬

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PHOTO by Akihito & Miyuki Fujii

私は犬の銅版画をつくった。
写真や試し刷りの経過をみると改めて驚く。
はじめの頃、筋骨逞しくオオカミのようだった犬は、
日を追うごとに痩せてゆき骨露になった。
版も限界というくらいぼろぼろになっていった。
そして、最後の最後に明確になったある一瞬は
導火線を伝う火花のように、自分の中にあるあらゆることとつながった。

不思議なことに、私はこの『犬』を毎日ぶっ通しで制作してきたにもかかわらず、
また自分のなかで節目となる作品になったにもかかわらず
どんな作品だったかを具体的に思い出すことができない。
その図像や色は朧げながら浮かぶのだが、
普段、自分の作品を思い出すときのような感触をもって思い起こすことがまるでできない。
それは『犬』が完成したあとも見る時々によって様々なものをうつすからなのだろう。
私がもっと見なければならないものたちが、この中に封じ込められている気がしてならない。
私のところに来てくれた犬。
版画はさながら化石のようでもある。

昨年の秋、neutronの個展でじいじいの連作を終えてからのブログ大体一年分を読み返してみた。
そこには忘れていたこと、捨てたもの、いろんなものが散りばめられていて
気づくこともたくさんあった。
一年、点はゆるやかな線となり私を押してくれていた、その流れと自分の変化を改めて思わずにいられない。
考えて考えて考えつづける時間がまた始まっている。
これから絵の制作に入りながら、ひとりのその時間をしっかりと持ちたい。
ここからはじめてゆく。
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by ai-pittura | 2009-10-06 11:32 | 版画 | Trackback | Comments(4)
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Commented by ちびちび at 2009-10-07 01:59 x
謙虚に自分を見つめなおし、振り返り
そして次へつなげていく作業が、
新たな一歩や創造につながるのかもしれませんね。
Commented by ai-pittura at 2009-10-07 10:33
ちびちびさん そう思います。
表面的なことにとらわれず、本当に謙虚に自分の中に降りてゆこうとし続けられたら
結果的に全てのことともつながるように思います。


Commented by mohariza6 at 2009-10-10 01:07
ai さんの銅版画がどう云うものかは、わかりませんが、
その掘り込んだ線が、消すことが出来ない、銅版画(エッチング)は、その一本一本の線(掘り込み)は、後戻りの出来ないものと思っています。
それが銅版画(エッチング)の醍醐味と思います。
その掘り込む「一線」に、<思い>を掛け(描け)られるのは、「画家」として、まさに<本望>のように思います・・・。
Commented by ai-pittura at 2009-10-11 21:12
mohariza6さん つくった銅版画は来年、東京で展示の機会があると思います。
また写真も載せる予定です。
後戻りできない、そうですね。
最後までつながり、残ってゆく痕跡は生きることと同じと感じます。
一瞬一生ということを改めて突きつけられます。


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